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稲葉さんの言葉 [稲葉的詞世界]

憚ることなくB'zが好きだと公言している。
その理由は単純明快で、彼らが拵え発信する楽曲やパフォーマンスが、
私がもつ「何かをかっこいいと思う感性」と重なり、
聴いたり見たりしていて非常に心地良いからである。

自分のお金で購入した初めてのCDがB'zの『May』だった。
表題曲の『May』で最後に唄いあげられる一節、「笑ってくれれば僕の世界は救われる」という
語感の良さに魅了され、当時何度も繰り返し聴いていた。
毛色の違う2nd beatの『You pray, I stay』も最高にかっこよく、
言葉とメロディが織り成す「切実さと不穏感、音のシンプリティ」が堪らなく好きだ。

『May』を皮切りにどんどん彼らの作品を聴いていった。
その過程は日本国内で制作年度の違う外国映画が順不同にインポートされ
消費されるように、とにかく気になった彼らの作品をひたすら聴いていった。
暗黒時代を聴いたかと思えば、デジタル・ダンスナンバーへ突入し、
それを抜けたら珠玉のバラードが揃うコンセプトミニアルバム『FRIENDS』を聴いた。
勿論B'zの新譜が出れば必ず聴いた。

そんなことを続けている中、早い段階で『LOVE PHANTOM』に出合った。
それはベストアルバム『B'z The Best "Pleasure"』の一曲目。
永い荘厳なストリングスから始まり、加速度的に展開は進んでいき、
最初に感じた厳めしさは切迫感や悲壮感へと印象を変える。
畳みかけるような言葉の連なり、かき鳴らされるギターの音色から強烈な洗練さを感じた。
流れ進行する言葉とメロディに鳥肌を覚え、この『LOVE PHANTOM』を起点にして
ますますB'zへの傾注に拍車がかかった。

彼らが創出した秀逸な作品群に出合う度、
自然と興味の対象は「作品」から「彼ら」へ移行した。
こんなにも多くの素敵な作品を生み出し続けている「彼ら」は一体どんな人なのか―。
とりわけ私の場合は、ヴォーカリスト・作詞家の「稲葉浩志」に強く惹かれていった。

「稲葉浩志」を深く知りたいと思った。
彼の紡ぐ歌詞から彼の諸々の事柄・事象に対する考え方等を想像し、
「稲葉浩志」という人物像を心の中で浮かび上がらせていく。
無論、歌詞は作詞家の日記ではないので、歌詞世界で見出される哲学等が
そのまま作詞家のそれと重なるとは限らない。
しかし、ソロアルバム『マグマ』がその考えに揺さぶりを掛けた。

『マグマ』は1997年に発表された稲葉さん初のソロアルバム。
『冷血』で幕をあけるこの作品はたびたび内省的と評される。
『マグマ』に収められている十五の作品世界に登場する主人公は、
各々が存在するパラレル世界の中でそれぞれの生活を営んでいるが、
そこで彼らが直面する無念さ、無力感、憤り、諦め、あるいは戸惑い等といった
感情の波に翻弄される様は実に共通し、それは十五の作品群が有機的に結びつき、
あたかも一つの物語を奏でているようにも感じられるくらいだ。
実社会との関係、よりミクロ視点で言えば人と関わりを保つ中で自らの
「あるがまま」に外圧がかかり、それが維持できなくなる。息苦しくなる。
その耐えがたい状況に煩悶する姿やあふれ出る爆ぜた想いが『マグマ』全体を覆う。
それが時に優しく、時に激しく、打ち寄せる波のように私の思考にとどく。

多くの群衆の中にいる自分が異物なのなか。自らが正しく外部が異物なのか。
不均衡こそが普通と思う自分に対し、外部は同質化した価値観を押し付けてくる。
その提示されたレールに乗るのが最良なのか。乗らないことが自分らしさなのか。
『マグマ』の世界観には実社会を真正面から捉える一対の確かな視点がある。
その視点を基点にして感情は膨らみ、爆ぜ、終始続く低体温感としてそれらは伝わる。
低体温でありながらもそれは確かな体温である。『マグマ』には人間らしい温もりがあり、
煩悶する様には心があり、女性を見る視座には艶かしさがあり、そして肌触りがある。
時に『マグマ』自体が呼吸する一個の人格と見紛うほどに、その世界観で描かれるすべてが
切々と真実として私の心にとどく。そして何より『マグマ』が示す「あるがまま」への抑圧と
それに立ち向かうからこそ発生する心痛が、私自身の思うところと共通し堪らなくなる。

『マグマ』を聴いて、稲葉さんの書く詞にはちゃんと心が通っていると感じた。
歌詞を介して響いてくる現実感、質感はとてもフィクションとは思えない。
この感覚が、歌詞を通して「稲葉浩志」を見ることへの虚無感を潔く振り払ってくれる。

言葉は感情の媒介であるけれど、
往々にして心模様そのすべてを言葉で伝えるには無理がある。
稲葉さんは、言葉にはなりきれない想いをちゃんと言葉に置き換えてくれる。
あるいはこの事象にはこういう捉え方もあるのかと新しい気付きをくれる。
たぶんこうだろうなと思っていることに対してやっぱりそうだよねという納得をくれる。
このような多くの魅力を孕んだ稲葉さんの言葉の海に随分と長く浸かってる。
それが堪らなく心地良い。

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